あらためて「ザ☆ベストテン」の魅力
今はいい世の中で、自宅でパソコンを前にすれば好きなだけ昭和時代の楽曲を聞くことができますし、スマートフォンで外出先ですら聞くことができる時代です。でも、それは一人で見ることになりますよね。
毎日「歌番組」が存在していた1970年代から1980年代。テレビの前には自分一人ではなく、家族が揃って見ていたんじゃないでしょうか。奇抜な衣装な歌手にツッコミを入れたり、あられもない姿で歌うアイドルにドギマギしながら、そして、感動的な聴かせる曲に、感情移入して時間を忘れる。そこには「誰か」がいてくれたような気がするんですよね。
「ザ☆ベストテン」さんは小さな店です。ママさんが一人で選曲からお酒を出されるまでやられています。そこに集まる人はこの時代の歌謡曲を聞いて懐かしく思う人だけです。見ず知らずと言っていい人と昔話をして、ママさんの「こんな曲見つけてきた!」っていうその当時見ることがなかったような曲をお客さんみんなで聞いて、あれやこれやツッコミ入れるような。
あの時の「家族とのひと時」がなんか蘇った感があるんですよね。小さな店だからこそ、そこがまるで居間のような空間になっていて、落ち着く空間なんですよね。そして、何よりイベントでもなければ地下鉄の終電で終わるというのもいいところ。なんでしょうね。みんな帰るときに「お先に」って感じで声かけて帰るんですよね。お客さんが、ママさんが、仲間な感じがするのです。
もちろんリクエストもできますが、だいたいリクエストがない時も、何か関連する曲をかけていたり、曲を思い出せなくても、なんとなく周りの人がフォローしてくれたり。そして何より楽しいのが、前にリクエストされた曲を「ノート」で見るのが楽しい。
このノート、皆さん酔って書いてるのもあるんですが、性格が出るんですよね。きっちり書いている方、曲名も歌手名もめちゃめちゃなんだけどきっとこの曲だろうとわかるような書き方だったり。このノートだけでも楽しい気分になります。
チャージ1000円、飲み物は基本的に500円という良心的な価格で、しかもキャッシュオン式なのでその都度コインと飲み物を引き換えるというシステム。正直儲かってないでしょ!と言いたいくらいなんだけど、この価格だからこそ私などが通えるという店でもあります。ノンアルコールもありますし、実際お酒飲まない方もおられますので、そういう面でもあまり飲めない私としては気楽です。
でも、どんな店もいつまでも残るわけではないです。ママさんも先日手術をされて、しばらく店を休業されていました。そう思うと、気になるなら早めに訪問されてみては?とも思うわけです。多分すすきので歌謡曲コンセプトで、カラオケを設置していない店はここだけだと思います。私もカラオケバーだったらちょっと通えなかったと思いますし(ほらYoutubeで「歌ってみた」とかみたくないって思うタイプね)本当に貴重な店だと思うのです。
何より素敵なママさんの魅力もありましょう。飲食経験なしからこの店を始められたとのことで、いい意味で「ママ感」の薄い方です。もちろんママと客ではありますが、どこかお友達のような親近感を感じるのですよね。そしてお客さん同士でなんとなく仲良くなっちゃう関係。もちろんその間にママさんがおられるわけで、この店の雰囲気や客層もママさんの人徳なのかなと思います。
願わくばこの時間がもう少し続いてくれたらいいな。そう願っています。