2024/04/22 歌謡曲が好き 岡崎体育 2000年代歌謡曲 ライブ鑑賞

岡崎体育さんのZepp Sapporoライブを見てきました


目次
  1. 北海道はライブ・コンサートの「鬼門」
  2. 岡崎体育さんの悲痛な叫び
  3. ワタシはなぜ岡崎体育さんのライブに行ったのか
  4. 実際のライブの感想
  5. 言葉は人を呼び寄せ、言葉は人を去らせる

当サイトは1970年代から1990年代の方について多く書いているサイトではありますが、実際にライブに行くことができるのは「今」活動されている方になります。

今回岡崎体育さんのライブに初めて行ってみることになりました。

北海道はライブ・コンサートの「鬼門」

以前も当サイトでは書いているわけですし、当然音楽業界の方々は良く存じているとは思うのですが、北海道、札幌のライブはとかく集客力が弱いという問題があります。ある程度「売れている」方でも満席にならない、ギリギリまでテレビなどで「好評販売中!」と告知を行わなければならない、さらには最近ではそれを行うとSNSに書かれて当人が知ることになるなどなるので、あまり行われないとは思いますが、当日にレコード屋さんをぶらぶらしていたらチケットを無料でもらえたりなんてこともありました。えっ?紅白出場歌手で人気と思っていた○○さんが?って当時はね、思っちゃう。

広域首都圏人口が4300万人以上、国内の人口の37%近くを占めています。関西圏2000万人、中京圏1100万人、九州全体で1300万人、東北6県で860万人と思うと、北海道の520万人はかなり少ない。そして、首都圏などからの高速交通網が発達していれば地方開催でも熱心なファンは移動してくれます。

そう、北海道は他県からの流入が空路に限られてしまう。昨今はLCCの発達で身近な足になったとはいえファンがちょっと行ってくるわ!というには空路は一歩踏み出すには勇気がいりましょう。さらには昨今はインバウンドの関係もありますが各地のホテル宿泊料が高騰、これも遠征組には難しい面です。さらには北海道内のファンにしてみてもライブ終了から自宅に帰ることができる区間は限られ、宿泊を余儀なくされる。そういう面で「520万人道民」すべてを集客の対象にできないという問題があります。
アーティストの側からも機材輸送はどうしてもトラックを海路であるフェリーなどに載せなければならない以上札幌開催は負担が大きいものになります。

以前よりドームツアー、Zeppツアーと銘打った全国ツアーを行うアーティストの皆さんの中でも「札幌外し」は現実的に多く起きていて、それに対する北海道のファンの「あきらめ」もあるのです。

それでも多くのアーティストさんが札幌での開催を企画してくれています。世間的に人気があるアーティストさんがこんな小さなライブハウスで?って思っても、実際その場にいくと当日券が発売されていたり、後ろはスカスカだったりってことはままあるのです。

ですので、アーティストが自ら来てくださいと告知することは何も不思議なことではありません。雪まつり時期に札幌開催を行ったヤバイTシャツ屋さんもその一組です。この日は札幌ドームでQUEEN(その前座としてGLAYも出演)など大規模なライブがあり、Zepp Sapporoのライブはなかなか満席にならなかった。47都道府県ツアーと銘打ったライブツアーでは札幌と沖縄だけが売れ残っていた状況でした。
航空やホテルの高騰もあって遠征が期待できないならばと地元のファンに向けてのメッセージを発信し続けたのです。

しかし、ライブ前日には満席となりました。もちろん演者たる本人たちだけでなくファンが「ちょっとでも興味をもった」人を後押しする「輪」ができていったこと、そして最後に残ったチケットは150枚ほどだったというのもあったのでしょう。
さらに沖縄公演もついに完売し57公演すべてを完売しました。
チケット買ってくださいと演者が言う、これは売れている人売れていない人関係ありません。会場前でビラ配りしてでも一人でも見て欲しい。だからこそ頑張るのです。

岡崎体育さんの悲痛な叫び

2024年4月から全国Zeppツアーを行う岡崎体育さんは3月8日にこのようなツイートを行います。
さて、先ほどヤバTの話をしましたが、その3月23日の沖縄公演の対バン相手が岡崎体育さんでした。しかし、ヤバTどころか、自身のZeppツアーの集客はなかなか芳しいものではなかったようです。


Zeppホールの2階席は椅子席であって、スタンディングである1階席が敬遠されているのもありましょうが、そのスタンディング部分の集客が「人数」の問題になりますので、2階席満席は実数としてはあまり芳しいものではないといえそうです。
ちなみにZepp Sapporoは1階席スタンディング時は1階1800人、2階スタンディング99人+椅子110席となり2,009人定員となります。1階を椅子席にすることで723人定員にもできる仕掛けです。

「ライブハウス」の「オールスタンディング」を敬遠するのはダイブやモッシュなど、そのファンならば楽しいかもしれないが、一見や気になっているだけのファンには敷居が高いというのがあります。そのような環境ではないことも本人からもファンからも繰り返し告知されます。

そして、チケットの売れ行きに対しても正直に告知します。

札幌、1800人定員に314枚、17.4%しか売れていないという惨状であることを知らしめます。4月1日のツイートでも札幌は426枚。この間14日間ですから1日8枚しか売れていません。このまま開催日を迎えてもキャパシティの半分も入らないことになります。


岡崎体育さんの叫びに対して、ファンはどう応えたのか、いえ、ファンじゃない人をどう「気にさせた」のか?特にTwitter(X)では岡崎体育気になるという発言をした人にはすぐにファンがキャッチし後押し、チケットを買ったという発言には本人やマネージャによるキャッチを繰り返します。これぞ草の根という活動です。
Twitterの特性上、自身の発言や検索ワード内容が次回のおすすめに出てくる、結果タイムラインが岡崎体育さんとそれに対する発言で徐々に埋められていく。そこに悪意を持った書き込みなどほとんど見られない。「エコーチェンバー」的効果も一つそれを後押しする効果になったとも言えましょう。

これを「みっともない」と思う層がいるのはわかります。しかし、売れていないから売る努力をすることを否定してはならない。多くのアーティストがその「みっともない」ことができるかどうか?できないならばどうするのか?売れないガラガラのステージを甘んじるのか?なのです。

岡崎体育さんが何回かツイートした残数から売れた枚数を計算してみました。
4月1日の「助 げ で ぐ だ ざ い!!!!!!」から4日で151枚、そして、4月19日までに700枚以上を販売しています。何が後押しされて買うのでしょうか?システム料含め7,000円以上になる決して安くないチケットです。その7,000円を出すと決めさせるのは何か?です。

ワタシはなぜ岡崎体育さんのライブに行ったのか

今回私の飲み仲間となりました、元歌謡曲バーの元ママさんと伺いました。ママさん、以前行われた風とロック芋煮会で見た岡崎体育さんが良かったとのことで、そしてこのときの記憶と、もう一つ、3月頭の時点での岡崎体育さんのマネージャ松下さんのtweetが感動的だったというのです。

ライブが素晴らしいから見に来て欲しい!って話は誰もが書くと思うんです。ライブが素晴らしいのはきっと毎度そばでライブを見ているマネージャさんなら当たり前に感じているでしょう。しかし、彼女は「私が岡崎体育のライブを初めてみた瞬間の感動を共有したい」と書いた。札幌ではファンではない方が何の事前知識もない中で多くの人が初めて岡崎体育さんのライブを見る。そのときにきっと松下さんが感じた「感動」を見る人が感じると断言できる、それだけ以前からも今もライブが素晴らしいことに「中の人」が自信を持って勧めることができると言っているってことなんです。

メジャーデビュー5周年。岡崎体育の才能に惚れ込み、5年間をともに歩んだふたりのマネージャー【前編】
https://cocotame.jp/series/020068/


メジャーデビュー5周年。岡崎体育の才能に惚れ込み、5年間をともに歩んだふたりのマネージャー【後編】
https://cocotame.jp/series/020079/

もちろんこれはレコード会社の媒体の記事ですからそれを割り引く必要がありますが、どれだけマネージャ2人が岡崎体育さんの才能に惚れ込んだか。それがわかる記事です。

岡崎体育さんは2019年にさいたまスーパーアリーナに1万9000人を集めたライブを行い、一度は裏方として作家業に専念するとしていた時期もあったようですが、パフォーマーを続けた。27歳までにメジャーデビューすると口外し実際2016年に26歳でメジャーデビュー、30歳までにさいたまスーパーアリーナでライブするとライブ中に口外し、29歳でそれを行う。口に出すことで退路を絶っていくスタイル。そしてそれが「口に出すから」共感されそれに向かって周りも動き出すことを知っているからこそ各公演が埋まらない中で正直な心境を口に出し、そしてそれをファンが周りが助けていくという流れになっていった。

本人もマネージャも「言葉の強さ」を自らの力に、そして、周りの力に変えていったことがわかるのです。

うーん、4月21日ね、時間があったらね~と思っていた私が、日程的に休みであることが確定して、行く!と言えたのは4月1日のことです。420枚しか売れていないことが発表になった後です。tweetの列を見て、このライブは行きたい!こう思いました。実際私のチケットの整理番号はB250番台、先行予約などを引いたら実際売れていたのは450程度だったんじゃないでしょうか。

おっさん
岡崎体育
2021/10/8 1587646801

実際のライブの感想

4月21日、開演時間頃に行きますとZepp Sapporoを取り囲む長い列、そしてめったに見たことがない当日券を求める列。19日の段階では残り771枚のアナウンスですが、ライブハウスですからまぁ、半分くらいの入りでも散けて格好はつくかなと思っておりました。
実際に入場すると、後ろの方が混んでいて、前側には結構空間があるのが他のライブとはちょっと違う感じですね。トイレに行っても元の場所に戻ってこれるというtweetの話は嘘ではなく、通路というか空間がそれなりに保たれています。むしろ当日券で入場する方も多かったのか後ろの方がびっしり人がいるという状態になってます。

開演までの待ち時間、前の方の人も時々振り返って客の入りを確認するという方が多いのが優しい世界。そりゃ全く売れていないとSNSで告知、それに応えて少しずつ売れて、当日券がありますとも告知、最後まで迷っていた人を前売りでも当日でも実質のチケットの差は少ないよと最後まで背中を押し続けたファン。

本人の発表ではこの日1400人が来場。当日券は40枚用意したようですが売り切れ、その後の人はチケットを渡さず来場していたと。さすがに満員にはなりませんでしたが、見渡す限りの人で埋まりました。逆算すれば残りは610ほど。当日券を含めてラスト2日で150枚以上は追い込んだことになります。実際のところオールスタンディングのフロアはその間隔の取り方なので充分「入ってるな」と思わせる風景でした。

昨年も岡崎体育さんはZepp Sapporoでライブをやっていますが、そのときに比べるとTwitterの熱量が違います。実際昨年、どのくらい動員したのかはわかりませんが(マネージャさんのtweetでは少なくは見えないが・・・)もしかすると感染対策椅子席だったんでしょうか?

ツアーは続きますのでセットリストは公開しませんが、初見の曲が多かったとはいえ、楽しく見ることができました。多くの曲はスクリーンに歌詞が出ていますし、また、MC多く、また、水分補給タイムが多いのも高齢になってきた私としても嬉しいところです。さすがにステージ上でポテチ食べてるのは笑いました。
前半後半で間に本人出演のCMが流れるのも、実はこれだけCMに本人が使われているのは売れっ子の証拠でもあるわけです。


宇宙と長野
岡崎体育
2024/3/27 1735703556


エクレア
岡崎体育
2016/5/18 1537255240


笑顔になれる楽曲、そして、真面目な、考えさせられる楽曲。事前に曲を聴かないで行ったのは正解です。「才能」を存分に感じます。そして、この歌詞を書くって、普段どのように考えて生活すれば書けるだろうか?と思います。ライブでしか味わえないもの、そしてフィジカルで楽曲を聴くことでしか味わえないものがありますので、よろしければYoutubeや配信であっても検索して聞いてみて欲しいなとも思います。

秒で出てくるアンコール。お約束は無いといいながら「どっちのえー」はこのくらいはわかるよって部類。そしてこの日最も大きい「えー」は岡崎体育さん自身が札幌日帰りだったという話で。この時間のライブなので想像はできましたが、大変ですね。そして子供たちが楽しんでくれていそうなのが良かったですね。

なんでしょうね、MCなしで突っ走るタイプのライブと違って、発熱が少ないのか会場の冷房が良く効きました。ぼっちでも、高齢でも、ちょっと立ってるのが辛くなっても、2時間でスパッと終わるのも含めて優しい世界です。

言葉は人を呼び寄せ、言葉は人を去らせる

言葉を大きめに言う、ビッグマウスと言われようが、それに向かっていくと自分を鼓舞することは大事なことです。300枚しか売れていないと聞いたときに「ペニーレーンでも埋まってない」と言える、その土地土地のライブスペース規模を把握して、どう売っていくかをすぐに考えること。プロモーター任せにしない、そして多分大きな宣伝はできないとも思うし、後援であるラジオに出演するくらいしか多分できることがない。
そのなかで、SNSの力で、ファンの力で満席にならないにしても1400人を集めた。つまり、ざくっと1000人は「岡崎体育って名前は知ってるけど、ライブ行きたいほどではない」人を引きつけた。(多分)嘘偽りのない発売状況の途中経過の発出、正直な言葉での対応で最後何で背中を押されるのか、購入のクリックをするのか、7000円という金額を払わせるのか。

もちろん私も気になったライブすべてに行くことは予算上も日程上もできません。でも、絶対に行きたいライブは押さえます。そうじゃない、行けたら行くくらいの方を一段引き上げるのは最後は言葉、その言葉が大事なのではないかと思うのです。岡崎体育さんはライブ中にいくつかの「約束」をしました。

65歳になってもバタバタサンバをzeppでやる!
また札幌でやります!次は必ずZepp Sapporo完売させてみせます!また必ず札幌来る!
(日帰りで夜の町に行けないことを)ここにいる1400人をすすきのの1400件の飲食店として、札幌の夜を堪能したことにします!
ここにいる1400人の顔を覚えて人生最期の時に走馬灯として流します、1400人を一つの生物として流します!
ライジングサンにまた出たい!(JOIN ALIVEは?って客席の声に、あっち会社別って、ここも札幌事情をわかっておられる)
いつの日か必ず紅白歌合戦に出演します!


そして、このライブ、前説で「岡崎体育嘗めてました!岡崎体育史上札幌での最大動員です!」と高らかに宣言、売れていないというtweetからこんなに入ったんだ、一人一人がそれを目撃したんだと一気に高揚感、ぶちあがった。ここでこのライブの成功は約束されていたんです。

そして、私が一番心に響いたのは

応援してくださいとお願いする前に、応援してもらえるような人になります。

これです(少しニュアンスが違うかもしれんが)今回、なかなか動かない北海道の「ファンじゃない人」を動員できたのは、ただお客さん入りません!買ってください!だけではない、人としての誠実さが少しだけSNSからにじみ出て、それを知るファンが今こそファンの出番だと背中を押し続けた。その結果と思うのです。チケット代以上に!損はさせません!と。そして、当たり前と言ってはなんだけど、当日券は普通の値段で(前売りより少しだけど高い値段で)売っているし、安売りして埋めたわけでも(多分)チケットばらまいたわけでもない。新規のお客さんにだけでなく、自分の元々のファンに対しても誠実だったんですよ。



もちろん、このような売り方が毎度毎度できるわけではありません。次回会場はもう少し小さなものになるかもしれません、でも、「鬼門」である札幌でも、満席に近い状況にできるのだという、一つの頂点を見せたというのは非常に大きなことだと思います。
そして、ネットの中は実はリアルだったということを改めて見せたともいえます。今回ライブを見た人が、他のアーティストのライブも見てみようと思うかもしれません、次回も必ず行くと思ったかもしれません。子供たちが「子供のうち」からライブを見る体験ができること。これがどうしても地方では少なくなってしまう。ライブに行くという「機会」「きっかけ」は必要なのです。そして子供が大きくなって、またその子供をライブに連れて行く。少子化はつづいていくのですから、「音楽に触れる」それが今後の音楽業界にも必要なことです。


今後も札幌でアーティストがコンサート、ライブを開いてくれることを、どう継続していけるのか?札幌外しを少なくするにはどうすれば良いか。ライブ会場が限られ、ライブ会場としては大きすぎることで生まれた札幌ドームの約半分にできるステージングも含めて、プロモーターとアーティストさんはこれからも知恵を絞っていただいて、そして札幌にコンサート、ライブ文化を根強くしていきたい。ライブにただ行っただけのワタシもそれを応援していきたいなと思うのです。

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