2023/11/23 歌謡曲が好き レコードが好き

レコード・CD発売日をどう知るか?


目次
  1. 1970年代の発売曜日・発売日
  2. 1980年代の発売曜日・発売日
  3. 1990年代の発売曜日・発売日
  4. 1970年代・80年代の発売日をどう調べるか?

当サイトは以前からレコード発売日に関して、複数の資料を確認して記載しています。
この結果を基にサイト内にコンテンツ「レコード発売日」を設置、基本的に今日の日付でその日に発売されたシングルレコードを一覧にします。

木曜日のタマネギ 80年代歌謡曲発売日
https://www.thursdayonion.jp/recordsales.php?re_y=80

この発売日、重要な意味を持つようになったのはそれほど昔のことではありません。というか、物流面で現在のような高速物流体制が構築されるまで、発売日という概念が大きな意味は持たなかったのですね。

1970年代の発売曜日・発売日

1970年代、当サイトで把握する約5,000枚のシングルレコードの発売曜日を調べてみましょう。
 日曜日 15%
 月曜日 13%
 火曜日 14%
 水曜日 14%
 木曜日 14%
 金曜日 15%
 土曜日 15%
おおよそまんべんなく発売曜日が設定されています。では日付で見てみます。1%未満は除いています。
 01 16%
 05 19%
 10 11%
 15 1%
 20 8%
 21 17%
 25 26%
5日、25日で約半分、あとは1日と21日が多いですね。1%未満ではありますが、3日とか全くない訳ではありませんが、概ね5日ずつ発売日があるような感じでしょうか。

この当時、物流に日数がかかります。レコードのプレス工場は関東近郊にありますから、出来上がったレコードを関東に配送するのは当日可能かもしれません、しかし、関西は九州は北海道は?となりますと、当時ものすごく時間がかかっていたのです。
例えば関西方面は1968年に東名高速道路が開通するまで、国道1号線の箱根の山越えを行わなければトラック輸送ができず、そのわずか2車線の道路に1日1万5000台もの自動車がひしめく状況。鉄道貨物による直行便が運行される(それまでは各地ヤードで貨車の入替をするので非常に到達時間がかかった)ものの、相次ぐ国鉄ストで到着時間が読めないという恐ろしく物流の困難であった時代といえます。
そのトラックも大口輸送が優先されますので、軽量で小さな荷物、それでいて「こわれもの」であったレコードの配送は非常に大きな苦労があったともいえるのです。まだ「宅急便」が無かった時代です。
1970年代は東名高速道路が開通したばかりである対名古屋、対大阪でその状況ですから、東北や北海道では「レコード発売日」がそれほど大きな意味を持たないことはご理解いただけるとも思うのです。

この到着日数については、例えば郵便局に相手先の住所から概ねの到着日数がわかる表を置くようになったのが1999年からですので、仕事でも多くの方が、この荷物は多分○日に着くだろうという感覚で仕事をせざるを得なかったのです。

手紙いつ届くか分かります 日数表、全国郵便局に 来月1日から
1999年05月30日 朝日新聞
 手紙やはがきが、あて先にいつ届くかわかるサービスが六月一日から、全国の郵便局で始まる。郵便物の到着日数を地域別にまとめた表を郵便局の窓口に備え付け、日数ごとに色分けした日本地図を掲示する予定。小包は「午前、午後」、速達は「午前、午後、夜間」という配達時間帯もわかる。郵政省は「郵便はいつ届くかわからないというイメージを払しょくしたい」と強調している。

青函トンネルが開通するまで、例えば札幌-東京間の貨物列車所要時間が22時間。現在は18時間程度と4時間改善、そして天候が荒れて連絡船が出なければ何日でも貨物は滞留したのです。

1980年代の発売曜日・発売日

特にレコード等の小口物流が大幅に改善されたのは1976年のヤマト運輸の小口輸送サービス「宅急便」が始まってからになります。それでも北海道ですと雑誌類発売日の数日遅れは当たり前、週刊誌は3日遅れが1988年の青函トンネル開通で2日遅れになったくらいの感覚です。
レコードは発売日より前に発送が開始され、概ね発売日に地方でも店頭に並ぶようになってきましたが、それでも発売日の午後になってからや翌日など地方民にはなかなか厳しい時代であります。

1980年代、当サイトで把握する約8,700枚のシングルレコードの発売曜日を調べてみましょう。
 日曜日 10.0%
 月曜日 11.5%
 火曜日 11.6%
 水曜日 23.2%
 木曜日 14.2%
 金曜日 15.3%
 土曜日 14.3%
圧倒的に水曜日が多くなりました。これには大きな要因があります。オリコン週刊チャートの集計期間です。オリコン週刊チャートは毎週月曜からの7日間が集計期間になります。えっ?じゃぁ、月曜日発売にすれば良いじゃないか?となるのですが、ここでも関係するのは物流の問題です。

月曜日に発売するためには、その前日、日曜日までに各店舗に商品を配送しなければなりません。北海道などを除けば1日で配送されますから発送は土曜日になってしまう。土曜日は休みの企業も多く物流網として貧弱であって遅延が出やすい。それを避けてさらに1日前に発送すると、今度は店に「まだ店頭に出せない」段ボール箱が積み上がり倉庫を圧迫します。そして何より大きな問題は届いた瞬間から発売する「フラゲ日」が前週になってしまうので、2週に別れてしまうという欠点があります。

1970年代よりは物流問題が改善される傾向にあり、到着日数が読めるようになってきたこともあって、水曜日発売にすることで発送を月曜日にでき、「フラゲ日」も集計期間に収まることになります。また、地方の到着遅れ地域であっても「その週」に集計期間に収まるという面があります。

では日付で見てみます。1%未満は除いています。
 01 13.6%
 02 1.2%
 05 10.1%
 10 3.6%
 16 1.1%
 20 1.0%
 21 40.9%
 22 1.9%
 25 12.1%
 26 1.7%
 28 1.2%
21日強いですねぇ。21日が必ずしも水曜日にはならないというのがありますが、これは物流問題で週間チャートが重要視できるようになった結果ともいえるのかもしれません。それまでは雑誌媒体の集計する月間チャート(21日から翌20日を集計期間)の方が重要視されていたともいえましょうか。あとは大人的には売掛期間の話はありますよね。きっと。月末で締めますからその前に売りたいですし。

1990年代の発売曜日・発売日

さて、1980年代後半になりますと発売日が別の意味で重要視されてきます。これが「貸与権」問題です。
今や配信の世の中で、レンタルCDの利用が減ってきてはいますが、そのご先祖様である「貸レコード」が世の中に登場したのは1980年と言われています。レコード会社としては発売直後の新譜が貸レコード店で安価に貸し出され、当然ユーザーはそれをカセットテープなどに録音してその先も聞き続けることは苦々しく思っていたことでしょう。貸レコード店はそのレコード盤の仕入れ以外に権利者に対価を支払っていなかったわけです。
1983年に貸レコード暫定措置法が可決、翌1984年に著作権法改正が可決され、レコード会社には「貸与権」があるとされました。貸レコード店に貸し出し数に応じた報酬請求もできるようになりました。また、新譜の発売日から一定期間のレンタル禁止ができるようになったというものです。そうなりますと「発売日」というのがとかく重要であるということになります。

ですので、1970年代、80年代前半は発売日がいまいち不詳な作品が結構あるのですが、少なくともCD化と前後した1984年あたりから以降で発売日が不明という作品はまずありません。なぜならジャケットに発売日が明記されているからです。
「N・11・21」と書かれているレコードをお持ちしました。1984年11月21日発売のチェッカーズ「ジュリアに傷心」です。11月21日はわかるけど、じゃぁ「N」ってなによ?これが暗号というか、ほー、そういう意味なんだ!とわかったのは手元のレコードを年代別に見たからですね。
もったいぶりましたが、以下のようになっています。
 N 1984年
 I 1985年
 H 1986年
 O 1987年
 N (2回目の登場なので使用せず)
 R 1988年
 E 1989年
 C 1990年
 O (2回目の登場なので使用せず)
 R (2回目の登場なので使用せず)
 D 1991年
 K 1992年
日本レコード協会のローマ字表記「NIHON RECORD KYOUKAI」をあてはめているんですね。とはいえ90年以降は西暦下2桁を表示することが多くなり、あまりこの暗号を見る機会はありません。手元のCDを見る限り1992年を最後に使っていないように思えます。
 1990年以降はあまり「暗号」を見たことがない
1990年以降はあまり「暗号」を見たことがない
CDになってから、表記にさらに○内にアルファベットが記載されています。
・「○X」は貸与禁止対象であることを示します。(Xじゃなく×らしい)
・「○L」は邦楽盤であることを示します。「○Y」は洋楽盤。
・「○P」は原盤レコード製作者権利と最初の発行年。
・「○C」は著作権者権利と最初の発行年。
を表しています。再販盤やレコード会社移籍後のベストアルバムとかで表記が変わることになりましょうね。

1990年代、当サイトで把握する約12,000枚のシングルレコードの発売曜日を調べてみましょう。
 日曜日 5.2%
 月曜日 7.5%
 火曜日 3.4%
 水曜日 45.9%
 木曜日 13.2%
 金曜日 14.3%
 土曜日 10.4%
水曜日を意識するものが約半分、流通問題で余り発売遅れを考慮しなくて良い面が木曜、金曜などの発売もあるのかもしれません。

では日付で見てみます。
 01 9.1%
 02 2.2%
 03 2.0%
 04 1.3%
 05 3.0%
 06 1.7%
 07 2.2%
 08 2.1%
 09 1.5%
 10 3.3%
 11 1.2%
 12 1.2%
 13 0.9%
 14 1.0%
 15 1.1%
 16 1.9%
 17 2.2%
 18 2.1%
 19 1.9%
 20 2.2%
 21 26.3%
 22 4.4%
 23 3.1%
 24 2.9%
 25 9.5%
 26 3.0%
 27 1.9%
 28 2.0%
 29 1.4%
 30 1.0%
 31 0.5%
うーん。21日も多いけど、かなり分散する傾向があります。どちらかと言えば水曜日発売重視ともいえるかもしれません。


1970年代・80年代の発売日をどう調べるか?

1984年以前の楽曲に関しては、アーティストさんのサイトで明記してあったり、オリコンチャートにランクインしておりオリコン紙に記録があるものは比較的簡便に調べることができます。(ただし、オリコン社とアーティストで日付に相違がある場合もあって、複数の情報からどれを使用するのかは悩み多い)

レコード・マンスリー
そうではないもの、特にランクインせず、失礼ながらあまり枚数の出なかったものは、なかなか調査が難航します。一つの方法が「レコード・マンスリー」紙を参照する方法です。
レコードショップで配布されていた雑誌レコードマンスリーは1965年創刊、レコード発売情報を広告を交えながら羅列している雑誌でした。多くのレコードショップでは配布(無料で)していまして、私も一時期通っていただいておりました。
このうち1984年7月以降はB5判に拡大されて、発売日が「日」まで掲載されるようになりました。逆を言えばそれ以前の情報では月までの情報になるということです。

プロモーション版
特にネットオークションで見かけるレコードのうち、有線放送局等に事前に送られているプロモーション(見本盤)レコードには発売日が記載されている物があります。
 見本盤には発売日が記載されている場合がある
見本盤には発売日が記載されている場合がある
こちらは「年」が記載が無いのですが、たいていの場合、年月まではわかっているので、これで日が確定できる場合がありますね。

iTunes等に正確に登録されている方
アーティストさんによってはiTunesやSpotify等の配信で登録されているリリース日が発売日となっている場合があって、これはものすごくありがたいです。
 iTunesに正確なリリース日が登録
iTunesに正確なリリース日が登録
当サイトではiTunesのリンクにもiTunesから取得したリリース日付を記載しています。

本当に困る「月すらわからない盤」
情報が本当に少ないレコードは、盤面に記載の年情報以外の情報が無いという場合があります。アーティストとしても情報が少なく、この場合は、最悪「年」だけ記載、またはレコード番号の近い日付がわかっているものから「月」を想像して「○年○月頃」と記載せざるを得ない場合があります。

当サイトの情報はできるだけ正しい情報をとは思っていますが、なにぶんこのような不確定なものを使用しなければならない面がありますので、明らかにおかしいなぁと思われましたらご一報いただきますと幸いです。

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