2022/04/11 歌謡曲が好き 80年代歌謡曲 楽曲紹介 中森明菜

中森明菜さんに松岡直也さんが提供した楽曲「ミ・アモーレ」と「月夜のヴィーナス」


目次
  1. 「ミ・アモーレ」
  2. 「赤い鳥逃げた」
  3. 「月夜のヴィーナス」

1985年3月から4月は、以前も当サイトで書きましたとおり個人的には転機があった時期でありまして、自分の望まない形で、望まない町で不便な生活をし、また、友人もいなければ、何か楽しみがあるでもなく、そしてなによりこの町はラジオの入りが極端に悪かった。

北海道は広いのでラジオの送信所を道内の各所に持たせています。しかし、私の住む町はどの送信所からも遠く、酷い雑音のなか、しかもロシアや韓国などのラジオが混信する中で聞くしかありませんでした。民放FM局に至っては全く入りませんでした。
そこそこ綺麗に聞こえるのはNHKだけ、テレビこそ視聴できましたが、狭い家ですし、夜遅くまで見ることもできない環境でした。手元の携帯ラジオの受信感度ではこの町ではNHKしか聞くことができませんでした。

春というのに雪の山が残り、道路は泥濘むような細道、空はどんよりして、海は荒れ、私の心を蝕んでいく状態が自分でも理解できました。レコードプレーヤさえない家で、ラジオを剥ぎ取られた私にはこのとき夢も希望もありませんでした。
この町のレコードショップは小さな電気屋さんの一角、決して入りやすい雰囲気でもなく、店に入ると店舗の奥の居住スペースから店主が出てくるというタイプの店。何も買わずに店を出るのはいたたまれない気持ちになります。でも、レコードに触れていたかった。今売れているレコードのジャケットだけでも確認したかった。

前段が長くなりました。

「ミ・アモーレ」

1985年4月11日のザ・ベストテン。中森明菜さんの「ミ・アモーレ」が1位を獲得しました。3月に発売になっており、レコードのヒットはあれど、それ以外のランキングが伸びなかったことで10位、3位と順位は上げていたものの足踏み状態だったこの曲がやっと1位になりました。前回の記事でも記載したとおりザ・ベストテンのランキングはレコードの発売が高いだけでは上位を狙えないシステムですので、ラジオのランキングやはがきのランキングが高くならないと上位を狙えないのです。

どこか南国のような異国を感じる、夏のような「暑さ」を感じるこの曲は、当時の暗い気持ちに少しだけ日を射すような、私にとってはそんな楽曲でした。そして「一千一秒ときめきを無駄にしないでってそう告げたの」という歌詞が、勝手な想像で長い時も、短い時も時間を無駄にするなと言われているようで、すこし奮い立ったのも事実です。そして圧倒的な歌唱力で歌う中森明菜さんに心を奪われた。そんな4月です。
当時の歌謡界ではあまりなじみの無かった楽器がふんだんに使われていた楽曲も、その楽しそうな音なのにどこかそれが悲しげだったり、風に流されるような心地よさだったりを感じて好きな曲になりました。

「ミ・アモーレ」中森明菜
発売日:1985年3月8日
オリコン最高位:1位
オリコン年間チャート:1985年 2位
ザ・ベストテン最高位:1位
ザ・ベストテン年間チャート:1985年 3位
売上枚数:63.1万枚
レーベル:ワーナー・パイオニア
レコード番号:L-1668

A面:ミ・アモーレ
作詞:康珍化
作曲:松岡直也
編曲:松岡直也
歌唱:中森明菜

B面:ロンリー・ジャーニー
作詞:EPO
作曲:EPO
編曲:清水信之
歌唱:中森明菜

ロンリー・ジャーニー
中森明菜
2008/11/12

その「南国」感を感じさせてくれるのが、きっと作編曲の松岡直也さんのセンスなのでありましょう。松岡直也さんは自身のジャズピアニスト、青い三角定規の「太陽がくれた季節」の編曲など作編曲活動も精力的に行っていたようです。
1985年のニュースステーション(テレビ朝日系ニュースのオープニングテーマ)の作曲もされます。通称青屏風と呼ばれる背景も含めて懐かしいですね。番組によってアレンジや使用楽器が異なるというのも含めて、テレビ局に予算があった時代というのを感じます。ニュースステーションはこのあと日替わりでもアレンジ変えていたような気がします。

「赤い鳥逃げた」

その年の5月には「ミ・アモーレ」をさらにラテン的アレンジにされて12インチシングルで発売された「赤い鳥逃げた」が発売になります。「歌詞違い」ですから最初は違和感があるのですが、聞き慣れるとこちらの方がどこか「飛び立つ」新しい自分になっていくようなプラスの意識を感じるようになります。

それは雪が無くなって晴天の日が多くなり、海が穏やかになり遠くまで青空と青い海が見渡せる、この町の新しい魅力をやっと感じることができ、そして不本意ではあるがこの町で生きていくことの少しの希望を感じながら少しでも前向きになろうと思ったのであります。

「赤い鳥逃げた(12インチ)」中森明菜
発売日:1985年5月1日
オリコン最高位:1位
オリコン年間チャート:1985年 20位
ザ・ベストテン最高位:6位
ザ・ベストテン年間チャート:1985年 46位
売上枚数:35.4万枚
レーベル:ワーナー・パイオニア
レコード番号:L-3601

A面:赤い鳥逃げた
作詞:康珍化
作曲:松岡直也
編曲:松岡直也
歌唱:中森明菜

B面:BABYLON
作詞:SANDII
作曲:久保田真箏
編曲:井上鑑・久保田真箏
歌唱:中森明菜

BABYLON (バビロン) [Re-Mixロングヴァージョン]
中森明菜
1985/5/1


月夜のヴィーナス
中森明菜
1985/4/3

「月夜のヴィーナス」

ラジオ用のアンテナを自作して、なんとか少しでも雑音のない環境でラジオを聞くべく努力し、民放FM局も入るようになった我が家であります。そこで流れてきたのが中森明菜さんのアルバム「BITTER AND SWEET」に入っています「月夜のヴィーナス」でした。作詞は松井五郎さん、作編曲は松岡直也さん。

1985年4月3日に発売されたこのアルバム自体が意欲作であります。私個人はこの曲をラジオで聞いただけで、この当時買うことのできなかったアルバムでしたが、あとからCD化され廉価版であるQ盤になったときにやっと入手し、10年越しに手元にやってきた楽曲でありました。

不良として夜に遊ぶことのできないような町であります。しかし、夜に家を抜け出して高台から海を眺めるのは好きでした。月夜に誰もいない、寒い砂浜であっても、そこに「月夜のヴィーナス」がいるような、そんな子供時代でありました。いろいろ辛かったし、この時代の楽曲は今でも心を抉られるのでありますが、でも、やっぱり聞きたくなる曲なのです。

今日は自分のことを書きすぎました、何も楽曲紹介になっていない記事になってしまった。申し訳ない。
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