2020/10/14 歌謡曲が好き

今だから、あえて、昔は良かったとは言いたくない。



昭和後期のヒット曲を多く紹介するこのサイトに大きく関わることになります、作曲家筒美京平さんが10月7日にお亡くなりになりました。

氏が残した数多くの曲、1960年代後半からつい最近までも作曲活動を行っていて、特に70年代は編曲も多く手がけられており、私たちがちょっと口ずさむ音楽が筒美京平さんの作品であることも多いことでしょう。


本当は、当サイト、筒美京平さんの話題を早く書くことは止めようと思っていました。サイトのアクセスを稼ぎたいわけでもありませんし、こんな素晴らしい曲があった!と書くのは他のサイトでもいくらでもあることでしょう。

ただ、いくつかの記事のコメントで「あの当時の楽曲に比べて今の楽曲は・・・」とか「今の薄っぺらい楽曲は・・・」とか、悲しい言葉も見かけました。

才能に溢れ、素晴らしい楽曲を残していった偉大な作曲家を一般の人が評価する時に、誰か、何かと比較して片方を貶すことで持ち上げるようなことをいっても誰も喜ばない。むしろ、それは偽りの評価なのではないかとも思うのです。


未来は誰にも見ることができません。未来に流れているであろう素晴らしい曲を今聞くことはできません。だから私たちは過去の楽曲、積み上げられた、減ることの無い楽曲からその評価をするしかありません。その中で自分の気に入った曲を見つけていくしかありません。誰がどう頑張ったって世に出た全ての楽曲を全て聴くことはできません。その過去の楽曲の「一部」でしかない何千万曲が収録されているというサブスクリプションだって全て聞くことはどれだけ時間をかけても無理です。まして、音源になっていないものも合わせたら、この世にはどれだけの曲があるか誰もわかりません。


だから、私も、あなたも、今知らないだけで、聞いたらきっと大好きになるはずの曲が必ずどこかにあるはずなんです。そんななかで、狭い中でAは素晴らしく、Bはダメなんて言ったところで意味の無いことです。

私にとって合わなかった楽曲、私にとって耳に心地よい楽曲というだけなんです。


どうしても、今がうまく行っていないと思えば、昔は良かった、昔は素晴らしかったと思ってしまう。誰もその時代に戻れないから、確認のしようもない。だから中途半端なウソもまかり通ってしまう。過去を改竄して何故か素晴らしく言う人がいる。

よく考えて欲しい。どんな大ヒット曲でも、全員が素晴らしいと思うわけではない。この曲は好きではないという人もいる。しかし、1970年代、80年代を中心に、何ヶ月も同じ曲がヒットし、街角を流れ、誰もが歌える。それは本当に画一化された世界。そして、実力があっても、その曲がどれだけ素晴らしくても世に出ることが難しい時代。

今、あなたが「これいいな!」と思えば、それがヒットしていようがいまいが、好きなだけ聴くことができる。これこそ個人が最大の客になる時代なんですね。そして少ない資本でも活動を続けていけるアーティストの側の変化もあります。次の曲をリリースできる。これが素晴らしいんです。この曲は売れなかったらお前ら解散な・・・そこから這い上がったグループの回想録はよくありますが、それを聴くのは「這い上がった」からで、実際には這い上がれず人知れず消えていった歌手、作家陣も多々いらっしゃるんです。

だから、今。「今」がいちばん素晴らしい。「今」が、近い未来が、遠い未来が少しでも素晴らしくなるように皆頑張っているんじゃないかな。

そう思いたいんですよ。


私は過去の楽曲も大好き。売れた売れなかったに限らず、レコードに針を落とす。全く売れなかったらしい70年代のシングルレコード。「今まで聞いたこともない曲」そして、クレジットに、こんなところにも筒美京平さんの名前を見て、驚くのです。

売れたから凄い。でも、売れなくても凄い。もしあなたが、これを機会に筒美京平さんのヒットナンバーを聞くのでしたら、その中に、あれ?こんな歌手知らないな。って方も是非拾ってみてください。そしてもうひとつ。2000年代に書かれた数は少ないながらも、時間をかけて作られたと思う楽曲も是非聞いてみて欲しいのです。

2013年の平山みきさんの「ビヨンド」新曲としてベスト盤に収録されました。


ビヨンド
平山みき
2013/11/20

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